東京大学が女性300人採用を宣言 背景に進まぬ男女平等
東京大学が2027年度までに女性の教授・准教授約300人を採用する計画を発表しました。女性限定の役職を新しくつくったり、女性限定で公募したりすることで、22~27年度までの6年間で女性の教授141人、准教授165人を新たに採用するとしています。
国立の大学が女性の具体的な採用数まで明言することはこれまでにないことですが、背景には、日本の大学などにおける女性教員の割合が海外と比べて極端に低く、男女平等や多様化の推進が遅れていることがあります。
2020年にOECD(経済協力開発機構)がおこなった調査によると、日本の大学などの高等教育機関の女性教員比率は30%で、調査した32ヶ国の中で最低でした。東京大学は国内の大学でも特に比率が低く、16%しかありません。
多くの国々では、近年、さまざまな職業における女性比率が高まっています。日本も過去に比べればわずかに増えてはいますが、まだまだ男女平等が遅れている現状です。
研究や開発などのイノベーションの分野では、多様性があるチームの方が成果が高い傾向があることも知られています。日本政策投資銀行の調査によると、男女混合チームによる特許資産の経済効果は、男性だけの場合の約1.5倍になることがわかりました。大学でも女性比率が高いほど画期的な研究成果を生み出せるとの期待が高まっています。
女性の教員が少ないだけでなく、役職の高い女性が極端に少ないという問題もあります。次の図は、高等教育機関の教員のうち、役職が高くなるほど女性の比率が下がることを示しています。
東大が実施した学内の意識調査では「研究室内などで性別によって役割分担をさせられたり、研究指導の際の条件を変えられたりした」などとする回答が一定数あり、大学教員の中に無意識の女性差別や偏見が存在していることがうかがえます。女性が高い役職に就きにくい現状は、教員や研究職をめざす女性が少ないことの原因にもなります。
こうした中で、6年間で300人の女性を採用するとした東京大学の計画は、男女平等と多様化を進めるきっかけとなるのでしょうか?
低すぎる日本の女性教員比率を改善することが期待される一方で、ただでさえ少ない日本の女性研究者が東京大学に集められ、地方の女性研究者がより少なくなる懸念や、男性の研究者が職を失うのではと心配する声もあります。一過性の改善で終わらないかどうか、これからの展開が注目されます。
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