トランプ前大統領が加速させた アメリカの「分断」

アメリカの次の大統領を決める2024年の選挙に、トランプ前大統領が立候補すると表明しました。「アメリカを再び偉大で輝かしい国にする」などと宣言しています。


トランプ氏は、2016年の選挙で勝利し、17~20年までアメリカ大統領を務めました。トランプ氏は任期中も際立って保守的で強硬な主張をおこない、外交では「アメリカ第一」を掲げて国際協調を軽視したり、不法移民を出身国に即時送還する法律を定めるなど、移民に対する強硬な姿勢を示したりしたほか、白人を優先する人種差別的な言動もくり返しました。


こうした態度は、国内の人種間・世代間対立をあおり、それが2020年に起こった「ブラック・ライブズ・マター(BLM)」の大規模な反差別デモにつながったとも言えます。さらにトランプ氏は多くの保守派の人物を最高裁の判事などの要職に起用しました。


その結果、22年6月の最高裁で「憲法は中絶の権利を与えていない」として、人工妊娠中絶を憲法上の権利と認めた判断を覆し、「中絶禁止」の州法を合憲とするなど、アメリカの保守化が進みました。これに対し、女性の権利擁護を求める人々は中絶禁止を激しく非難しており、米社会の分断がいっそう進んだと言えます。


こうした極端な態度に対する反発などから、2020年の大統領選挙では民主党のバイデン氏に敗れますが、その際もトランプ氏は選挙での敗北を認めずSNSなどで「選挙に不正があった」と主張し、それを信じたトランプ氏の支持者が連邦議会を占拠しました。トランプ氏がこの襲撃を先導したとして弾劾裁判がおこなわれますが、これは有罪評決に必要な出席議員の3分の2に届かず、無罪の判断となりました。


アメリカでは伝統的に、白人や高齢者、農村部の支持を多く集める保守的な「共和党」と、移民や若者、都市部の支持を集めるリベラルな「民主党」の2つが交互に政権を取り合う「二大政党制」の政治が続いていて、分断は長く続いているとも言えます。

トランプ氏は共和党の中でも特に「アメリカファースト」「反移民政策」「白人優遇」といった保守的な強硬姿勢によって人気を得ており、氏の態度がアメリカ国内の分断や他国との摩擦をさらに加速させる懸念もあり、その動きが注目されています。