働き方の新時代到来? マスク氏の決断は正しいのか
コロナ禍をきっかけに急増した在宅勤務。しかしコロナ禍が始まってすぐの2020年5月から在宅勤務を認めてきた米ツイッターで突然、「在宅勤務禁止」が打ち出された。起業家イーロン・マスク氏が、同社を買収した直後に電子メールで全従業員に通達した。
この突然の方向転換は、在宅勤務に慣れ切った従業員たちの経営に対する反発心を煽ったり仕事のやる気をそいだりしかねない。そうまでして方向転換をしたマスク氏の思惑はどこにあるのか。
「長時間労働か会社を去るか」 究極の選択を迫られる従業員
米ツイッターは、コロナ禍が始まってすぐの2020年5月から無期限での在宅勤務を認めていた。ところがマスク氏は買収が完了した今年10月、従業員数を半分に減らしたうえ、初めての電子メールで「在宅勤務を原則禁止」「全員が最低でも週40時間オフィスにいる必要がある」と述べた。「長時間猛烈に働くか、会社を去るか」とも迫ったという。
またツイッターの投稿では「1日当たり400万ドル(約5億7000万円)以上の損失を出している」とし、倒産する可能性にも言及。危機感を共有することで従業員を激励し、始めたばかりの有料サービスを成功させたい考えだ。
コロナ禍を経て……広がる“柔軟な働き方”
最近では、新型コロナの重症化率が下がり服薬治療薬の開発も進んでいることなどを受けて、各社が出社・在宅にこだわらない働き方を探し始めている。
東芝は米ツイッターとは逆に、事務や研究開発などに携わるグループ社員を対象として原則出社を撤廃する。新型コロナ感染防止のために在宅勤務を推奨してきたが、出社を前提とせずとも生産性を維持・向上できると判断した。業種を超えて激しくなっている優良人材の奪い合いに勝つため、また離職防止につなげるために、向かった方向が在宅勤務だったのだ。
柔軟な勤務体制は、製造業以外の業種で先行して導入が進んでいる。全国どこにでも居住しながら勤務できる制度はヤフーやディー・エヌ・エー(DeNA)などIT(情報技術)企業が既に取り入れている。NTTも7月から同様の制度を導入した。
出社が当たり前という意識を、コロナ禍が変えた
コロナ禍は「出社が当たり前」というこれまでの意識を大きく変え、多様化な働き方を生み出しつつある。米民間雇用サービス会社ADPの調査によると、「出勤を強制されたらどうするか?」の問いに「転職を考える」と答えた労働者の割合は65%だったという。
出勤時間がなくなって浮いた時間をどう使うかは自由。経営側は柔軟な働き方の余地を残して、現場の意向とのバランスに配慮しながら勤務体制を整えていく必要があるだろう。
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