ゲーム業界の勢力図に異変?「PS5」ファン離れの裏側
ソニーグループの家庭用ゲーム機「PS5」は2020年11月12日に発売された。発売前から予約が殺到するなど当初から多くのゲームファンの期待を集めたが、これまで2年間にわたって品薄が続くうちにファン離れが起こり、販売台数は伸び悩んでいる。米国ではライバルの「X-box」に販売台数を抜かれてしまった。
ソニーの十時裕樹副社長兼最高財務責任者(CFO)は「外出機会が増えたこともあり減速傾向から脱することができていない」と説明する。しかし理由はもちろんそれだけでない。ゲーム専用機を取り巻く環境が変化しているのだ。
発売3年目の「PS5」 直面する“三重苦”の要因は?
「PS5」は2023年で発売3年目を迎える。しかし発売当初からの「品不足」、それに続く「Xbox猛追」、近年の「パソコン(PC)ゲーム台頭」という三重苦に直面し、売り上げが伸ばせていない。
「品不足」については、コロナ禍やロシアのウクライナ侵攻などが要因となって、半導体を生産できなくなったり運搬が遅延したりしていることが大きい。
半導体は家電や通信機器、戦闘機やミサイルなどに使われているので、供給が混乱するとゲーム機が作れなくなるだけでなく、世界経済全体に影響する。
であるならば、「PS5」と同じ家庭用ゲーム機である「Xbox」はなぜ米国内で販売数を伸ばせたのか。ゲーム雑誌「週刊ファミ通」元編集長の浜村弘一氏は「コロナ禍の供給制約のなか、おそらくマイクロソフトはXboxの在庫を米国に集中させた」とみている。
「パソコン(PC)ゲーム台頭」については、熱烈なゲームファンが最新技術を取り込むスピードが速いPCに流れたと予想される。その一方で、手軽にゲームを楽しみたい層はゲーム専用機よりもスマホゲームを選んだ。
次々とPCゲーム市場へ参入 狙いは「若者の消費」
ゲーム機の売り上げ減はソニーだけの問題ではない。特に中国、韓国、日本を含むアジア太平洋が顕著で5.6%減。最大市場の中国で、未成年の利用時間制限や作品審査の厳格化など、政府がゲーム産業への規制を強化していることも響いた。
そうした流れに危機感を覚えた企業側は縄張りを拡大。ソニーはゲーム用モニターやヘッドホンなどの新ブランドを立ち上げた。マイクロソフトや韓国サムスン、コナミグループなどもPCゲーム市場に軸足を移しつつある。
企業が苦境を強いられながらもゲームに注目するのは、ゲームが成長産業であり、これから消費の主役になる若者たちの消費の入り口になっているから。
世界のゲーム市場は26年まで毎年約3兆円近く増える見通し。ゲーム市場を巡る覇権争いは、これからますます激しくなるだろう。
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